2026.05.27
シンガポールで海運会社を営む日本人オーナーより、オフィスリノベーションのご相談をいただいたのは今から半年前。ご要望は「会社そのものを体現するような空間をつくりたい」というものでした。
日本とシンガポール、そして、離れたふたつの国を結ぶこの会社の仕事の根幹にあるのは”海”。「Japan × Singapore × Ocean」を大きなコンセプトに据え、素材・色・家具・アート—空間の随所にそのテーマが感じられるよう、インテリアデザインを設計していきました。
▲After
▲Before「波のゆらぎ」を空間として表現したのが、この会議室です。壁にはサンゲツの和紙壁紙を採用。日本の職人が一枚一枚、手仕事で仕上げた逸品であり、その凹凸と陰影が、光の角度によって波の表情を映し出します。ミーティングテーブルは、Roger & Sonsによるレインツリー無垢材。Roger & Sonsは、シンガポールで伐採・枯死した街路樹を家具として再生させる「The Local Tree Project」を手がける、エシカルなローカルブランドです。シンガポールという土地に根ざした木を空間の中心に配置することで「この地に根付く日本企業」というアイデンティティを静かに表現しています。
日本の職人の手仕事と、シンガポールの風土が育てた素材が、向かい合う。そこに、ふたつの国を結ぶ海の記憶が静かに重なっています。
オフィスに足を踏み入れてすぐ、訪れる方を迎えるのがこの応接室です。フォーカルポイントとなる照明には、提灯を彷彿させる和モダンなペンダントライト、そして格子柄のシックな壁紙を採用しました。現代的でありながら、しっとりとした和のおもてなしを感じる空間を目指しました。
また、クライアントが自ら選定された祥風氏の書「岩」。どんな困難にも岩のように揺るぎなく立ち向かう組織であること。そして、荒波の中でも船が安全に、着実に航海できるようにという願いが込められていると伺っています。
雄大な自然を感じさせるその作品が、空間全体を凛とした趣きに引き締めています。
▲こちらのお部屋の一角(写真左)には、収納に組み込まれた冷蔵庫も設置しています。デザインと実用性が、自然な形で共存しています。執務エリアとは、透明性の高いガラスの仕切りで緩やかにつながっています。視線が抜けることで空間の広がりを保ちながらも、プライバシーと集中を守る—そのための空間がマネジメントルームです。天井を一段下げることで、シックで落ち着きのある、内省的な空気感を生み出しました。「籠もるための空間」でありながら孤立しない。開放性と閉鎖性のバランスを丁寧に調整しています。

社員が一日の大半を過ごす執務室で、最もこだわり抜いたのが照明設計です。採用したのは、遠藤照明のLED。
中でもこだわったのは「CR値」。CR値とは、演色性の数値で、一言で説明すると、“光が、色をどれだけ本物らしく見せられるか”の点数です。
今回は、色温度(光の暖かさ・冷たさ)だけでなく、光が物の色をどれだけ忠実に再現するかにまで踏み込みました。演色性の高い照明は視認性を高め、目の疲れを抑制します。結果として、集中が自然と持続する環境が生まれるのです。心地よい照明ほど、意識されることなく、空間に溶け込むもの。デザインだけではなく、この光を数値と実物サンプルで、何度も確かめながら選びました。
家具はオーナーのこだわりを尊重しながら、照明・仕上げ・レイアウトとの調和を丁寧に図っています。

執務室の一角に設けたパントリーは、単なる休憩室ではありません。オーナーのリクエストにより、仕事終わりに一杯傾けながらチームで語らえる、ラウンジのような空間として設計しました。
照明はあえて色温度を落とし、リラックスできる温かみのある光に。カーテンで仕切る案なども検討しましたが、最終的には空間のカーブを活かしてオープンな設計を選択。誰もが気軽に立ち寄れる、オープンで親しみやすい場所になりました。
素材やファブリックにもこだわり、ちょっとしたカフェやラウンジのように使っていただいています。「ここで働くことが心地よい」と感じてもらえることが、チームの結束へとつながると考えています。

半年間、オーナーと対話を重ねながら選んだ一つひとつの素材と光が、この空間の記憶となっています。新しい会社の出発とご繁栄を心から願っています。
オフィスも住宅も変わらず大切にしているのは、その空間で過ごす人のライフスタイルと想い。Sollys Designは、そこに丁寧に向き合うことを、デザインの原点としています。
シンガポールでのインテリアデザイン、オフィス・飲食店等のリノベーションについてはぜひご相談ください。
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