2026.05.19
今年も4月21日から26日まで開催されたミラノデザインウィークへ行ってきました。今回は、4度目の訪問ですが、私にとってここに来れることこそ特別で、一年の中でも最も学び多き場所です。
(昨年のミラノデザインウィークの「私的トレンドまとめ」記事はこちら)
世界中から1,900以上のブランドやメーカーが最新のインテリアを発表するこのイベント。イタリアのPressによると、今年は31万人以上もの来場者が世界167カ国から集まったと伝えられています。
その熱量の中で、私なりに感じたこと、発見したことをまとめます。
今回は特に、キッチン部門の国際展示「Euro Cucina」(2年に一度の開催)が重なった年で、キッチンにまつわるデザインの動きが印象的でした。
また、インテリア界の代表的雑誌ELLE DECORがキュレーションする今年のインスタレーションのテーマは「Sensory Landscape(センソリー・ランドスケープ)」=“感覚に訴える空間”。家具を「見るもの」から、触れる・感じる・包まれる・記憶に残る体験へ進化させた年と言われています。
あくまで私個人の視点でのまとめですが、下記で詳しくお伝えします!
世界がデジタル化・AI化でどんどん加速していく一方、人々は家の中に「スローダウンできる場所」「そのまま受けとめる癒しの場所」を求めているのだと、あらゆるブランドの展示から伝わってきました。ミニマリズムでもなく、マキシマリズムでもなく、「本質的なもので満たされた豊かさ」が表現されているという感覚です。
よりみられたのが、カーブ(丸み)。今までも取り入れられてきたデザインではありますが、2026年のミラノはその勢いが明らかに増している気がします。
▲ELLE DECORのショールームの一つで、Studiopepeがプロデュース。Sancalのコーヒーテーブルとソファも丸くてコロっとしたデザイン。大手ブランドから中堅ブランドまで、そして、ソファからキッチンに至るまで、エッジが丸く、柔らかい形状が広がっていました。
▲(左)Morosoベッドフレーム(右) Baxterのショールームも角がなく丸みが特徴的。インテリア界のレザーの代名詞であるBaxterが、今年は革だけでなくファブリックも採用。素材を組み合わせることでデザインの奥行きが広がった。2年に一度のEuroCucina(キッチン部門の国際展示)は今回の見どころのひとつで、今年の大きな特徴の一つは、家という空間の中で、キッチンの存在感が格段に増したこと。
以前のキッチンといえば「機能的であること」が最優先でした。
でも今年の展示で印象的だったのは「リビングに溶け込むキッチン」。キッチンが部屋の主役として、インテリアの一部として設計されていました。
特に目を引いたのが、アイランドキッチンの天板やカウンターエッジの処理。角が丸く、なめらかなカーブを描いているものが多くのブランドに採用されていました。また、素材はステンレスを使用しているデザインが特徴的でした。
機能的な配慮もあると思いますが、鋭く立つ直線的なエッジではなく、手でなぞりたくなるような丸み。その差は小さいようで、空間の印象をガラリと変えます。
技術は主役に出てこず「空間に馴染む存在感」であり、でもそこに手触り感ある美しさが宿っていました。
▲(左)Arclinea(右)Poliformのキッチン。角の処理にご注目。今年はArclineaのようなステンレス素材が多かったソファのシーティングにこだわるデザインが多く観られた今年。「どっしりとしたボリューム感」と「柔らかく包み込む感触」。バルキーで、ふわっとしていて、座ると体がゆっくり沈んでいくような…スッキリとしたローソファのミニマリズムとは対極にある、存在感のある大きなクッションと厚みのある座面が印象的でした。
▲Outdoorブランドで有名なPaola Lentiのリビングソファまた、下記の写真のようなしっかりとしたフレームの中にソファがおさまる構成で、フレームの存在感とクッションの柔らかさのコントラストがあるデザインも多く見受けられました。
▲(左)Poliformのソファ(右)Kettalのソファ日本のインテリア界を代表するKarimoku(カリモク)。注目は「Karimoku Re:issue by LICHEN」という部門で発表された、1982年のカタログからのソファの復刻。
40年以上前のデザインがまさに今のトレンドと完全に重なっています。体をすっぽり包むバルキーなフォルム、当時の時代感を持ちながら現代の素材・技術で蘇った一品でした。
▲ミラノデザインウィークで復刻されたKarimokuのソファと当時の雑誌の展示冒頭で紹介したように、今年のELLE DECORのインスタレーションのテーマが「Sensory Landscape(センソリー・ランドスケープ)」。そのインスタレーションは、五感に響き、自然と人工の間にある感覚的な体験を提示していました。
特に今年の傾向として感じたのが、素材の変化。多くのブランドで見られたのはブークレ、起毛ウール、スエード、ソフトレザー、 粗さを残した木材、マットストーン、手仕事感のある織物などが顕著でした。SNS映えする奇抜な形よりも、写真では伝わらない価値(=手触り感)が主役になっていると感じました。
その他、光沢ラッカー、ステンレス、そしてダイナミックな自然の柄を活かした大理石も多く取り入れられていました。“物質そのもの”を極限まで活かし、デザインとして手を加える心意気を感じた展示が多かったです。
▲ (左)Karimokuの椅子のアームは光沢ラッカー仕上げ(右)Molteni&Cの大理石のダイナミックなマーブルを活かしたテーブル日本のインテリアや美意識への注目は年々高まっていますが、今年はその質感が変わってきた気がします。
以前は「エキゾチックなもの」として扱われることが多かった和の要素が、今やラグジュアリーインテリアの語彙として当たり前に組み込まれている。
日本の木や工芸を活かし、クワイエットラグジュアリーを体現している家具ブランドTime & Styleはその代表格。その手仕事・クラフトマンシップは、世界でも確固たるポジションを得ています。
▲ ミラノに常設店舗を構えるTime&Style。ぜひ訪れた方は立ち寄ってほしいその他のブランドも格子や組木などを多く取り入れており、「和テイスト」として消費されるのではなく、それ以上に「日本的な美意識」がデザインの普遍言語として認められてきているのだと感じます。
▲(左)B&B ItariaのRonan Bouroullecによる組木のテーブル(右)Paola Lentiの茶室を彷彿させる屋外スペース
▲(左)Molteni&Cが取り入れたのは格子の棚(右)Paola Lentiの展示の一角で存在感があった川島織物セルコンの作品
▲Pradaが「Chawan Cabinet(茶碗キャビネット)」という展覧会を発表。愛知県の常滑焼にインスパイアされたアメリカ人のアーティストTheaster Gatesが手がけた花瓶には、さりげなくプラダのロゴ入り。展示の奥には茶室も用意されていた個人的に今年心に残ったのが、IKEAの展示。下記の写真をご覧ください。
あの「ビリー本棚」を一面に使ったインスタレーション。一見するとビリーとはわからないほど洗練されています。ラグジュアリーブランドが並ぶミラノで、デザインの本質って何だろう、と立ち止まって考えるきっかけをくれたブランドです。

まだまだご紹介させていただきたいことは山ほどあるのですが、今年のレポートとさせていただきます。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
毎年書いているように、トレンドはあくまでインスピレーションの一つ。「今年はこれ!」と飛びつくのではなく、あなたの暮らし方・価値観と照らし合わせながら、少しずつ取り入れていくことが大切だと思っています。
シンガポールで叶える理想のインテリアデザインについて、とことん伴走させてください。ご相談、ぜひお待ちしております。
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