2025.04.22
今年も4月7日から13日まで開催されたミラノデザインウィークへ行ってきました。
毎回、世界中のブランドやメーカー、デザインスタジオが最新のインテリアや空間演出を発表するこの一大イベントは、今後のトレンドを占う重要な場でもあります。
ミラノデザインウィークについての基礎知識はこちらにまとめていますので、ぜひご覧ください:
▶︎私流ミラノデザインウィーク2024の攻略方法
インテリアブランドの中には、シンガポールでも取り扱いがあり、目にすることもできますが、やはり本国・本会場での展示を見ることで、ブランドが意図するデザインの文脈や世界観に深く触れることができます。
というのも、シンガポールや日本など各国での販売は多くが委託店舗で行われており、ブランドの世界観よりも“売れるデザイン”が優先される傾向があるからです。
今回は、そんなミラノで目の当たりにした最前線のインテリアトレンドの中から、個人的に気になったポイントをいくつかご紹介します。あくまで私的視点でのまとめになりますが、お楽しみいただけたら嬉しいです!
昨年から続くこのレトロブーム。今年もその勢いは衰えず、60〜70年代のデザインが現代の視点でアップデートされ、多くのブランドから発表されていました。
特に印象的だったのが、サローネで最大級のブースを持つ Minotti(ミノッティ)。今年のテーマは70年代で、カリフォルニアやブラジルなどをインスピレーションにした新作ソファ5点を展開(5点ってすごい!)。
中でも「Bézier」という新作ソファが置かれた空間は、“60年代のカリフォルニア”がテーマ。背景の木製の壁はアフリカンオークだそうです。
また、その空間に使われていたフロアランプは、1960年代のグッチーニ製。偶然にも、Comoのアンティークショップで同じランプを見つけました。リアルなヴィンテージアイテムを用いることで、空間の世界観にぐっと深みが増していたのが印象的でした。
毎年話題となるイタリアのデザイン事務所 Dimorestudio のインスタレーションも3カ所中2カ所を回りましたが、どちらも直球のレトロスタイル。懐かしさと新しさの絶妙なバランスが心地よかったです。
この「レトロ回帰」がトレンドとして定着している理由は、大きく3つあると思っています:
現代人が古き良きものに安らぎを求めているということ。シンガポールのように新しい建物ばかりの国にいると、アンティークを愛でる時間が恋しくなる…そんな感覚にも通じます。
今のZ世代にとってはレトロ=新しい。ファッションのリバイバルと同様に、ヴィンテージやレトロが「今っぽくておしゃれ」な価値を持っているように感じます。
ここ数年流行していたミニマルな空間、特にコロナ禍に注目された“癒し系インテリア”への飽きもあるのではないでしょうか。再び装飾性を楽しむマキシマリズムの波が来ていて、それがちょうど60〜70年代のデザインにフィットしているのだと思います。
レトロ回帰と呼応するかのように、今年は「鏡面クローム」も各所でよく目にしました。2015年頃からはブラス(真鍮=ゴールド)がインテリアのアクセントとして定番になっていましたが、最近はクローム(シルバー)へと移行しつつあるようです。
例えば、Molteni&Cの新作ダイニングテーブルでは、脚と天板の側面に大胆なクロームを採用。レトロ感がより引き立っています。
Flexformでは、チーフデザイナーのAntonio Citterioが80年代にデザインしたソファを鏡面クロームの脚付きで復刻。彼のディレクションの色がしっかりと感じられる一品でした。
照明ブランドでもこの傾向は顕著で、代表格のFlos(フロス)もほとんどの新作にクロームを使用しています。
これは「私の観察による注目ポイント」としてですが、今年は特に“ガラス”の存在感が強く感じられました。大きく分けて2つの傾向があります。
光源が直接見える“グレア”を避けるため、これまで敬遠されがちだったクリア素材。しかし、今年は逆にその“グレア”をうまくぼかしながら取り入れたデザインが多数登場していました。
Flosでもその流れは顕著で、クリアガラスでも柔らかく包み込むような光の演出が印象的でした。
また、Davide Groppiというブランドの照明では、アクリル素材の“死角”を利用して光源を隠すという、非常にユニークなアプローチが見られました。(ちなみにこの照明、Molteni&Cの展示ではペンダントとしても使用されていましたが、個人的には少しまぶしかったです…)
ベネチア近郊の小さな島「ムラノ島」で作られる伝統的なガラス工芸「ムラノグラス」も、家具や小物、照明などに多く取り入れられていました。今回の旅で実際にムラノを訪れた影響もあるかもしれませんが、確実に目にする機会が増えていた印象です。
例えば、Baxterの照明はムラノグラスを大胆に使用。気泡や有機的な形が特徴的で、レトロ感と温かみを演出していました。
またCassinaでは、ムラノグラスを使用したコーヒーテーブルや、花瓶、ガラスと照明が一体となったミラーなど、印象的なガラスアイテムが並んでいました。
今回はミラノデザインウィークという巨大なイベントを、私なりの視点で切り取ってご紹介しました。
2025年4月30日(水)午前中配信予定の月一配信無料メルマガに、その他の写真などをまとめたアルバムのリンクを特典としてつける予定です。
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2024年から2025年にかけてのトレンドの流れとしては、よりマキシマリズムでカラフル、遊び心のあるインテリアへと移行していると感じています。そして全体を包むのは、“レトロ”という安心感と懐かしさ。
もちろん、こうしたトレンドをそのまま日常に取り入れる必要はありません。私のこれまでのクライアントの中で「最新トレンドにしてほしい」と言った方は一人もいませんでした。
トレンドはあくまでひとつのインスピレーション。
それをどう日常に活かし、あなたらしい空間に落とし込むかが大切だと思っています。
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