2025.02.28
シンガポールへ海外赴任する方の多くは、勤務先指定の不動産エージェントを利用するのが一般的です。
一方、起業での移住や親子留学・教育移住などを目的とする方は、賃貸物件探しの際に「テナント(借主)側」の不動産エージェントを利用することが一般的です。テナント側のエージェントを利用することで、テナントとオーナーとの間に立ち、要望や不具合の修繕交渉・物件契約をしてくれます。
Sollys Designでは、日本からシンガポールへ移住されるクライアントの皆さまを、不動産エージェントからご紹介いただくこともあり、そのうちの一つのエージェントであるSummerさん(SingaProp Pte Ltd の創業者)とシンガポールの不動産についてインタビューさせていただきました。シンガポールの物件事情にも詳しいのはもちろんのこと、彼女のご主人は日本人であることもあり、シンガポールで物件を選ぶ日本人が気になるポイントもよくご存知でいらっしゃいます。
今回のインタビューは下記のような内容でお伺いいたしました。
Sollys Design(石井):コロナ後以降、民間住宅の賃料が高騰し、2023年にはオフィスと民間住宅の賃料がいずれも過去最高を更新したとのニュースがあり、話題になりました。(2024年1月シンガポール都市再開発庁発表「不動産統計」より)シンガポールに住む日本人からも「シンガポールの賃貸契約更新の際に、価格が20-40%ほど上がった」という声は珍しくなく、お引っ越しをされた方も多くいらっしゃいました。そのニュースから1年経ち、2025年2月現在いかがでしょうか。
Summer:コロナ禍後の2022年から2023年にかけて急騰した賃貸価格と比較すると、2024年以降の価格上昇は緩やかで安定傾向にあります。特に、都心部(Core Central Region)では価格の調整が見られる一方、都心周辺エリア(Rest of Core Central Region)や郊外エリア(Outside Core Central Region)では、前年比2〜3%の上昇傾向が続いています。
2025年1月の賃貸市場データ(SRX調べ)によると、
また、賃貸価格の交渉余地については、物件の種類やエリアによって異なります。
例えば、オーチャードやリバーバレーといった都市部の4ベッドルーム以上の物件は、依然として需要が高く、価格交渉が難しい状況が続いています。一方で、その他のエリアでは条件によっては価格交渉が可能なケースも見られます。
現在の市場動向を踏まえると、2025年は大幅な値上がり・値下がりの兆候はなく、引き続き安定した価格推移が予測されます。
Sollys Design(石井):都心部ではなく、郊外エリアが値上がりしてきている理由は何ですか?
Summer:昨年、都心部では、多数の新規コンドミニアムが完成したため、一部の物件では依然として空室率が高い状況が続いています。一方で、都心周辺エリアと郊外エリアでは、今年から来年にかけて新築コンドミニアムの竣工が予定されています。都心部以外のエリアでは、多くの物件がオーナー自身の居住用として購入されていて、特に駐在員に人気の高い3ベッドルームの賃貸物件は、供給が限られているのが現状だからです。
Sollys Design(石井):日本人の方が好むシンガポールの物件はどのようなタイプでしょうか。
Summer:弊社の場合、日本の方には築年数が浅い物件をおすすめします。日本と比べると物件は精密に作られているわけではなく、劣化が速いです。そのため、シンガポールで築年数5年ともなれば、経年劣化を感じられる方が多いですし、細かい修繕が必要な部分も出てきます。できれば、コンドミニアムが建って1番目の新築入居がおすすめです。不具合があったとしても、オーナーではなくデベロッパーサイドでの不備なので、要望すれば修繕をしてくれるからです。ただ、新築のデメリットとしては、退去の時に汚れが目立ちやすいことは、挙げられるでしょう。
Sollys Design(石井):日本とシンガポールの間取りや設備の違い、特徴を教えていただいてもよろしいでしょうか。
Summer:日本とシンガポールでは文化も違うこともあり、シンガポールの物件で、100%日本人の方のご要望が合致する間取りや設備のご紹介はどこを探しても難しいのが事実です。特に日本の方は、ご自身でよくお料理されますよね。シンガポール人は、あまり自分では料理をしないので、キッチン周りの設備が充実があまりしていません。ですので、日本人の方が、一番気にされるポイントとして挙げられるのは、“水回り”ですね。
よくご要望があるのは、食洗機。ヘルパーを雇う文化もあるので、食洗機がビルトインされていないことが多いです。ビルトインは原状回復が難しいので、後付けをご希望される方も多いですね。
日本の換気扇は、外へつながっている強制排気口の機能がついており、スイッチをオンにすると、煙や匂いも外へと排出することができますね。シンガポールの換気扇は、クッカーハブと呼ばれて、室外へ排出されるのではなく、空気を循環させる仕組みになっています。フィルターで煙の油を漉し取った後、室内にまた出るので、魚を焼くなどの煙が多く出る料理にはあまり向いていません。気にされる方は、キッチンに窓があるなど風通しの良い物件をご紹介します。
日本は必ずバスタブ(お風呂)が設置されていますが、シンガポールではシャワーのみの賃貸物件の方が多いのが実情です。バスタブ付きのお部屋を希望される方がとても多いのですが、物件の特徴を事前に把握して検討をすることをおすすめしています。通常ウォーターヒートタンクというものが最低一つシャワールームの天井の裏側には設置されており、このタンクによって温かいお湯が出る仕組みになっています。通常1回78リットルのお湯を出すのが可能なのですが、バスタブは約200リットル。熱いお湯をバスタブに入れるのには足りません。中には、ウォーターヒートタンクが2つ設置されているコンドミニアムもあるので、バスタブを利用されたい方は、タンクの数を確認した方がベターです。その他に、バスタブ用にガスヒーターを備えたコンドミニアムもあります。ガスですとバスタブに十分なお湯を沸かすことができるので、おすすめです。また、お風呂だけではなく、シャワーの水圧も確かめるようにお伝えしています。シンガポールの水圧は日本のよりも弱い場合も多く、ご希望される方も多いですから。
シンガポールでは、バルコニーやエアコン室外機の設置スペースも床面積(Gross Floor Area)に含まれます。 そのため、契約上の広さが120㎡でも、実際の居住スペースは想像より狭いと感じることが多いです。 また、一部のコンドミニアムではバルコニーの面積が大きく、その分室内スペースが削られるため、間取りの工夫が必要になります。
シンガポールでは、中層階・高層階の方が人気です。その理由は、採光が良く、風通しがあり、害虫の被害が少ないためです。ただし、一部のコンドミニアムでは建物が高床式(Raised Deck)になっており、1階でも実際には地面から20メートルほどの高さに位置する場合があります。 そのため、ガーデンの景色を楽しみたい人や小さな子どもがいる家庭にとっては、低層階でも快適に過ごせる物件も。日本の物件との違いを理解したうえで、自分に合ったコンドミニアムを選ぶと、シンガポールでの生活がより快適になりますよ。
Sollys Design(石井):日本人の間では、オーチャード(Orchard)、ノベナ(Nonena)、マリーナ(Marina)エリアが特に人気なエリアだと思いますが、他に最近のトレンド、おすすめなどありますか?
Summer:高島屋、ドンキホーテなどもあり、シンガポールの中心地であるオーチャードエリアは引き続き日本人に根強く人気です。教育移住で来られる方も多く、どこのインターナショナルスクール(日本人小学校も含めて)バスで30分圏内で通えるところが魅力的ですよね。
自然があり、閑静な住宅地で、日本人コミュニティから少し距離がある方がお好きな方はブキティマ(Bukit Timah)あたりの物件も人気です。日本人会やボタニックガーデン近くのカンタキー(Tan Kah Kee)エリアも最近人気が上がってきていますよ。
Sollys Design(石井):インテリアの仕事をしていると、 修繕・修復・原状回復などについて気にされるクライアントが多いのですが、気を付けておくポイントは何ですか?
Summer:とにかく早期交渉がおすすめです。賃貸契約を正式に結ぶ前に、クライアントの要望を汲み取った契約条件として、私たち(テナント側の不動産エージェント)がオーナーに提出するLOI(Letter of Intent)というものがあります。LOIが受理されると本契約に進んでしまうで、家具の撤去や壁に穴を開けるなどのインテリア周りの条件は、LOI時点で入れておいた方が良いです。シンガポールでは、賃貸契約時の連絡手段としてWhatsAppがよく使われます。テキストのやり取りは、契約内容の確認やトラブル時の証拠として活用されるため、慎重に進めることも重要です。
◾️賃貸契約の流れとインテリア交渉タイミングについては、Sollys Design内記事でも以前ご紹介しています。合わせてご覧ください。「賃貸契約前に検討したい、シンガポールの家具なしor家具付きコンドミニアム」
インタービューは以上です。
不動産エージェントによって、おすすめするコンドミニアムやエリア、テイストは変わってきますが、Summerさんは、日本人が好まれるような機能的で、かつラグジュアリーなライフスタイルをお求めのクライントが多いそうです。Sollys Designのクライアントのご要望も細かくご相談にのっていただき、オーナーと掛け合ってくださる心強いパートナーの一人です。Sollys DesignからSummerさんもご紹介できますので、ご連絡くださいね。
Founder, SingaProp Pte Ltd (Part of Singa Group), PropNex Realty | CEA No. R065687Z
シンガポール国立大学で建築学修士号を取得後、HDB(住宅開発庁)や国内有数の建築・エンジニアリング企業で、都市開発や市場拡大に携わりました。HDB(住宅開発庁)や大手建築・不動産企業での経験を経て、海外クライアント向けにSingaPropを設立。建築の専門知識と不動産の豊富な経験を活かし、海外クライアントに向けたシンガポールでの不動産の売買や賃貸の仲介に加え、包括的な賃貸管理サービスも提供。多くのクライアントが経営者や駐在員であることを理解し、市場動向を踏まえた的確なアドバイスで、シンガポールの不動産選びをスムーズに進めます。
メールアドレス:summer.song@singaprop.com.sg
SingaPropのホームページは現在準備中。グループ会社のホームページはこちら。
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