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【対談】自主性や美的感覚を育てる、子どもとインテリアの関係性〜シンガポール在住・元小学校教員の山本さんとSollys Designが考える〜

Sollys Designでは、インテリアのご提案だけでなく、クライアントの理想のライフスタイルを共に模索し、機能性とデザイン性の高い空間をご提案しています。ライフスタイルは、インテリアだけでなく、教育や暮らし方、家族のあり方など、さまざまな要素が関わるもの。Sollys Desingでは、異業種の方々と意見を交わしながら、新たな視点を取り入れ、より良いライフスタイルのご提案に活かしていきたいと思っています。今回は、シンガポールに移住され、2児の父でもあり、元国立大学附属小学校の教員でもある山本剛久さんにインタビューさせていただき、“子どもの成長・教育とインテリアの関係”について意見交換をさせていただきました!

Saori:インテリアと子どもの教育というテーマで、お話しさせていただきたいのですが、山本さんが教員をされていらっしゃった経験から、まず思い浮かぶことはありますか?

山本さん:やはり一番に、教室の環境を思い浮かべました。私は小学校の教員をしていたので、毎日子どもたちが快適に学べるかどうかをチェックしていました。特に意識していたのは、ユニバーサルデザイン。どんな特性を持つ子どもでも、できるだけ学びやすい環境を整えることです。例えば、下記のようなことです。

照明蛍光灯がちゃんとついているか?明るさは適切か?を確認をしていました。

視界の確保:前の黒板周りに情報が多すぎると、子どもが集中できないので、必要なもの以外は極力掲示しませんでした。

色:教室の壁色は選べないことが多いですが、大きめの画用紙など色を使う時に、心理的にも落ち着く色を選んでいました。

Saori:掲示物などの情報を減らすことで、子どもが集中しやすくなるんですね。インテリアも同じなので興味深いです。色の観点からみると、緑が心を落ち着かせる色とされていますので、確かに、教室でも使われることが多いですね。

山本さん:掲示物においては、学校指定で掲示しなければいけないものもありますが、子どもがフォーカスしたい情報が散らばらないようにすることが大事です。たとえば、給食だよりなど、授業には関係ないので、目隠しのためにカーテン(布)をかけることもありました。

子どもが主体的に環境を作る創造エリア』

山本さん:先生主導で決める掲示物以外の工夫としては、私は子どもたちが自分でレイアウトできるエリアを作るようにしていました。たとえば、教室の後ろの壁の一部は、子どもたちにアレンジを任せていました。

Saori:なるほど。制限をかけず、子どもが自分たちのアイデアで環境を変えられる場所を“決める”と言うことですね!

山本さん:そうなんですよ。私のクラスでは「係」や「会社」と呼ぶグループ活動があったんですが、「このエリアはこの会社(係)が担当していいよ」と決めることで、自主性とクリエイティビティが育つんです。

『ほっとかず、ほっとく』。子どもの自立の育み方

Saori:山本さんが普段お子さまとお家で過ごされる時、お子様とどう関わられていますか?また、インテリアの工夫などあれば教えていただきたいです!

山本さん:我が家の基本的なスタンスは、『ほっとかず、ほっとく』。 我が家は2歳と4歳の子どもがいるのですが、子どもたちが自立的に活動することを応援したいので、基本的には『何かしたい!』と言う気持ちを邪魔しません。特に何かに集中している時は、途中で介入しないです。この状態を作るためにも『親の目の届かないところでも安全に遊べる』空間作りは意識しています。机の角のカバー、ドアに指を挟まないように、窓を開けて外に出ないように、などの最低限の安全を最初から絶対に確保しますし、そのほかに、日々、子どもの目線に立って生活家具を見直しています。

おもちゃ:「遊びやすく、片付けやすい」がポイント。発達段階に応じて収納を見直し、手が届く位置に配置。片付けは完璧さよりも、自ら片付けたいと思える習慣づくりが大切。
大きな袋やカゴにざっくり収納できるようにすると、子どもも負担なく続けられます

机や椅子の高さ:子どもの背丈に合った家具を選び、自分で動ける環境を整える。 また、水道やタオルに手が届くかなど、子どもの目線で日々チェック。 大人の家具が使いやすくなる補助用具の工夫も重要です。

壁面収納・クローゼット: 仕切りをつける、ラベルを貼るなど、子どもが整理しやすい仕組みを整える。 発達段階に合わせて収納方法を見直し、自分で片付けられる環境を作るのがポイント

子ども部屋 整理棚▲片付けやすい整理棚を設置した納品事例(詳しくはこちら)。年齢によって使い方も自由自在

山本さん:子どもが「大人を呼ばなくても自分でできる」環境が理想ですね。 私は、キッチンにいる時も、ドアを開けて音を感じ取れるようにしておくなど、必要な時にサポートできる距離感も大切にしています。

Saori:「お子さまを見守りやすい空間を作る」ことはクライアントからリクエストも多いです。実際、クライアント事例としてもキッチンと子ども部屋の間のドアを開き戸でしたが、開けたままにできる引き戸で、子ども達の様子を伺えるようにリノベーションした事例もあります。

リビングのドアを開き戸から、開けたままになる引き戸を新たに設置した事例。子ども部屋からの声も聞こえやすい(詳しくはこちら

Saori: お子様のために本棚をリビングにおきたいという方も多いのですが、そのあたりの工夫はされていますか?

山本さん:我が家は、リビングと子ども部屋の2つに分けて本棚を作っています。重たい図鑑や大人と一緒に読んだ方が理解が深まる本、ドリル系は、リビングの本棚に。子ども達だけで読めそうな本は子ども部屋に置いています。例えば、ニュースなど、外側から入ってくる情報があった時に、子ども達が刺激を受けるとしますよね。それに対して、すぐ出して調べられる本がリビングにあると、深掘りできると思います。昔だったら、百科事典、地図など…でも、最近は、タブレットで調べられるので、それもいいと思います!

▲本棚をリビングに設置したクライアント事例(詳しくはこちら

異国だからこそ『日本』を大切にする子育て空間

Saori:シンガポールでは、多言語・多文化に触れる機会が多く、教育的な広がりがある一方で、日本の文化や情報に触れる機会は少なくなりがちですよね。家庭では、どのように日本らしさを取り入れると良いでしょうか?

山本さん:そうですね。シンガポールでは、四季を肌で感じることが難しいので、家の中で日本の季節を感じられる場所を一角に作ると良いと思います。例えば、お子さんと一緒に季節の工作を楽しむのもおすすめです。日系幼稚園や学校では、季節に関する工作を取り入れていることもありますが、作品を持ち帰るのは季節が過ぎてからになることが多いです。一方で、インターナショナルスクールや現地校では、日本の行事に触れる機会がほとんどないこともあります。そのため、家庭の中に「季節を感じられるスペース」を用意することで、自然と話題が広がり、子どもたちの言葉や文化的な理解にもつながります。

季節ごとの飾り付けやコーナーを作る
シンガポールでは四季を感じにくいため、家の中で季節のモチーフ(鏡餅やしめ縄、ひな祭りや五月人形など)を飾る。リビングや玄関に、小物や装飾を取り入れるだけで、日本の四季を身近に感じられます。

日本のインテリアを取り入れる
畳や竹、風鈴、書道作品など、日本らしいアイテムを取り入れたスペースを作ると、文化への親しみが深まります。 友人を招いた際に、日本文化を話題にするきっかけにもなりますね。

シンガポール和室▲コンドミニアムの一室に和室を取り入れた納品事例(詳しくはこちら

Saori:いいアイデアですね。インテリアとしてよくご提案するのは、リビングのサイドボード。デザイン性が高いものも多いですし、かつ収納もできるので、実用性も兼ね備えています。サイドボードの上に季節ごとの飾り付けをすると、家族全員で楽しめます。スペースがない場合はコンソールテーブルも有効です。

▲ミラーの下に設置してあるのが、コンソールテーブル。省スペースに、飾り付けが可能

あとは壁に、ウォールシェルフを取り付けて、子供の絵を入れ替えて飾ったり、季節の小さいアイテムをさりげなく飾るなどができそうです。

▲壁に取り付けるタイプの”ウォールシェルフ”を提案した事例(詳しくはこちら

山本さん:いいですね!お子さんのアイデンティティ形成の時期に自然と日本が感じられる環境をつくることは、大きな意味があると思います!

本物に触れる大切さ

Saori:私たちの文化や伝統を継承していくのも、大人の大切な役割ですよね。もう一つお伺いしたいのが、「大人が子どもたちに本物に触れさせる機会をどう作るか」についてです。最近、インテリア業界でもコピー品が多く出回っています。本物のデザインには、作り手の想いやこだわりが詰まっていて、機能性や美しさの面でも価値が高い。一方で、コピー品は見た目が似ていて、価格が安いというメリットがあります。特に、子育て世代の方々は「汚れる」「壊れる」ことを気にして、使い捨てや価格の低いものを選びがちですよね。ですが、私は子どもたちが「本物」に触れる体験は、とても大事だと思っています。山本さんは、この点についてどう考えますか?

山本さん:「本物に触れること」は、子どもの美的感覚を養う上で非常に重要だと思います。我が家には、能面の「小面ゆき」が飾ってあります。これは、和の心を感じられるだけでなく、妻の祖父が彫り込んだ渾身の作品なんです。子どもにとっても「家の中にある特別なもの」として記憶に残ると思いますし、思い出が刻まれたものや、自分のルーツを感じられるものがあることは、とても大切だと感じています。ただ、我が家は本物のインテリアという観点では、今後考えていきたいところです。小さい子どもがいる家庭では、どのような取り入れ方が良いでしょうか?

Saori:そうですね。「汚れない・壊れない」=「手に届かない場所」に設置できて、目に触れられる本物のインテリアを取り入れるのがいいと思います。例えば、「照明」はとても良い選択肢です。 良い照明は、デザインだけでなく、柔らかい光の表情や、壁や天井に映る陰影の美しさも楽しめますよね。毎日その光を見て過ごすことで、自然と「美しいものとは何か」を感じ取れるのではないでしょうか。

▲お子さまがいても上質な照明を取り入れた事例。サイドボードも設置しているので飾り付けもしやすい。(詳しくはこちら)

山本さん:
とてもいいですね!本物だからこそ育まれる美的感覚ですね。そして、大人にとっても癒しの空間になり、親子で楽しめますね。我が家でも検討したい一つです。

まとめ

Saori:お子さま目線の空間作りについて、たくさんの気づきをいただきました。Sollys Designでも、子ども部屋のインテリアコーディネートのご依頼が多いので、ぜひ参考にさせていただきます。

山本さん:こちらこそ、ありがとうございました。シンガポールは、災害がなく、治安が良いという点で、子育てがしやすい環境だと感じています。コンドミニアムのプレイグラウンドに行けば、いろんな国籍の子どもたちと自然に交流でき、多文化を学ぶには最高の環境ですね。一方で、日本文化に触れる機会が少なくなるという課題もあります。

2025年2月より、親子のコミュニケーションのきっかけをつくり、言語を中心とした学習をサポートをするために『まいふぁーすとしんぶん』を発行しています(現在はモニター向け)。海外で育つお子さんにとっては、日本の文化や自然に触れながら言葉を学ぶことにお役立て頂けたら嬉しいです。教育に関するご相談なども、何かお役に立てればと思いますので、ぜひお気軽にお問い合わせくださいね。

Saori:今日はありがとうございました。

 

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